2016年03月07日

格安な詐欺

サンディエゴに住むようになって数年が過ぎようとしている。すっかり平和ボケし、通りを歩いても誰かにつけられていないか、など気にして後ろを振り向くようなことはなくなった。

しかしながら、そんな私も渡米したての頃にはかなり用心していたものだ。にも関わらず、詐欺にあったことがある。

New Havenに着いてすぐ、住む予定のアパートの改装が終わらず、私はしばらくホテル住まいをしていた。そのホテルには送迎サービスがあり、シャトルが大学からホテルを行き来している。だが、その送迎サービスは20時半に終わる。しかし、New Havenは治安が良いとは言えないので、18時から朝7時の間は大学のEscort Serviceに電話すれば、キャンパスの指定した場所から自宅など他の場所に無料で送ってくれるシステムがある。(素晴らしい!)但し、本来は私のホテルは遠すぎて管轄外なのだが、アパートが改装中という特殊事情があったので問題なく利用できた。よって20時半を過ぎた場合でも、私は無料でかつ安全にホテルへ帰ることができた。

この日、同級生が(アメリカ人らしく)バーベキューを計画し、クラスの21人中16-17人が大学の寮の庭に集まってビールを飲んだり肉を食ったりした。寮の庭というと、日本では今は無き東大駒場寮などを想像して眉を顰めるかも知れぬが、Yaleの大学寮はゴシック形式の美しい建物で、広々とした中庭に青い芝生が茂り、雰囲気はいい。

そしてバーベキューは20時前にはお開きとなった。私が詐欺の被害に遭ったのはそのときである。20時半前だったので、当然ホテルの送迎サービスはあり、私はホテルに電話して依頼した。しばらくすると、指定した場所にタクシーが現れた。いつもはホテルのロゴの入ったミニバンなのに、今回はタクシーなので、些か怪しいとは思った。しかし、タクシーの運転手が Premier Hotelとか言うから、ホテルが何らかの事情でミニバンを手配できなくて、代わりにタクシーを手配して遣したのだろうと勝手に想像して乗り込んだ。

運転手は意外に気さくで、どこから来たかと言う。日本と答えると、アクセントが日本じゃないじゃないかと言う。カナダのフランス語圏からも来ていると答えると、自分の祖父の代まではフランス語が話せたなどと言う。(運転手は黒人だったので)ハイチかどこかの移民かと訪ねると、ルイジアナ州出身だと 言う。Louisianaはルイ(14世)の地という意味だから、18世紀までフランス領で、3世代ぐらい前までフランス語を話す人が残っていたとしても不思議ではない。

さて、そうこうしているとホテルに着く。メーターは11ドル69セントを示している。タクシーはホテルが手配したと考えていたので、タクシー代はホテルが支払うのかと運転手に尋ねると、彼は知らないと答える。私はちょっと待てと言ってフロントで事情を説明すると、そんな話は知らない、ミニバンが迎えに行ったと言われ、ここに至って、漸くタクシー運転手に騙されたことに気がついた。騙された方が悪いので一応料金を支払おうとするが、財布には11ドルしかない(注:アメリカではタクシーにも15%程度のチップを払う)。運転手にATMで下ろしてくるよと言うと(自分でも呆れるが何というバカ正直さか?)11ドルでいいとか言う(詐欺なんだからもらえるだけで満足なのは当然だ)。結局11ドルだけ支払った。

後でよく考えてみると、騙したんだから1セントも払わないぞと強気に出てもよかったと後悔した。まあ、11ドルという格安料金で詐欺被害の社会経験を積めたのでよしとしよう。
posted by Alexis at 06:58 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月03日

コンビーフ

コンビーフと私の関わりは25年ほど前に遡る。家族がお中元だかお歳暮だかでもらった缶詰のセットに、コンビーフが入っていた。それを食べるに際し て、父が「コンビーフは牛肉を牛脂で固めていて体に悪いから」とか言って、まず熱湯で具を茹でて脂肪を溶かしてから、肉の部分だけを濾過して食べた記憶がある。味は覚えていない。

さて、妻の料理の本に「コンビーフのパスタ」なるものが載っているのが以前から非常に気になっていた。一般に好奇心旺盛な私はそれを作ろうと言ったのだが、彼女は昔一度だけ食べたコンビーフの不味さが脳裏に焼きついており、同意が取れず、作るなら一人のときに作ってくれという有様であった。

昨日買い物に行ったときに、偶然缶詰の棚の前を通過した。否応なく「コンビーフ(ブラジル産)」が目に飛び込んできた。もともと夕食にパスタを作る予定だったので、清水の舞台から飛び降りる気分でこれに決めた。

ソースは至って単純明快で、みじん切りにしたにんにくとたまねぎを透き通るまで炒めた後、コンビーフを投入して更に炒めるだけである。味の方はというと…

現世のものとは思えぬ不味さであった。

不味いとは言っても、所詮は牛肉の缶詰である。鮪の缶詰であるツナ缶や、パンに塗るレバーペーストは食えるのだから、慣れの問題だろうとは思ったがやはり不味かった。量が多い故、4食分もある。今日は、味を薄めるためにナツメグで味付けしてみた。更に、後味を消すために蜜柑を食べた。それでもまだ2食分残っている。

日本の小学校の家庭科でコンビーフとジャガイモを料理した、という話を聞いたことがあるが、純真な小学生に「牛肉=コンビーフ」と信じ込ませかねないことで、教育上問題があるのではないか、と思ってしまう。しかし、このメニューは家計への配慮の賜物だろう。小学校の調理実習では、確か材料は各自持ち寄るという形だったはずなので、(本物の)牛肉にしてしまうと、貧しい家庭は買えない可能性があるからだ。
しかしながら、ジャガイモとの相性は確かに良さそうだ。カナダ料理の一つに、パイ生地の中にマッシュポテトと牛ひき肉(たまに鹿の肉)と玉葱を詰めてオーブンで焼くというものがあるが、味的にはそのイメージではなかろうか?

しかし、今回のこのトラウマからはそう簡単に抜け切れないだろうと思われ、しばらくは未開拓のままとなるだろう。

posted by Alexis at 15:20 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする