2014年11月15日

米国は杜撰か?

経済学のPh.D.を取るために渡米してすぐの2008年8月末。Yaleで英会話の試験を受けた。ネイティブでない人はPh.D.3年生になるまでにこの試験に合格しないと、TA(teaching assistant)などとして雇ってもらえない。試験形式は、地図が渡されて道を説明するように求められたり、店での価格交渉の場面を想定して交渉を纏めたりというもので、会話能力だけでなく演技能力も求められるからとても難しく感じた。しかも、生身の人間にではなくテープレコーダーに向かって話すので奇妙だ。(一方通行の交渉なんて実際には存在しないから。)

60点満点で50点以上が合格なのだが、結果は丁度50点で合格。日々の講義などで忙しいので語学になど構っていられないと思っていたので、合格して嬉しかったのを覚えている。交渉場面の想定では「あなたに価格を決める権力はありません。上司と代わって下さい。」と非常に現実的な答えをしたのが奏功したのだろうか。 (この問題の回答時間は1分ぐらいあったのだが、こんな返答だったので数10秒で終わってしまった。)

同級生の一人と英会話の試験について話していたとき、彼は「maxは50点だった」と言った。私は満点は60点であると確信していたので、「いや、60点だ」と答えた。その後2回ぐらい「50点」「60点」の応酬が続いたが、漸く彼が同級生のMaximillianに言及し、私が点数の最大値 (maximum)に言及していたことが分かった。同級生には「君は変な数学の問題ばかり考えているからね」と冗談を言われてしまった。

別の同級生の一人はテープレコーダーの不具合で再試験になってしまった。ここでも米国は杜撰だった。

杜撰と言えば、テストの後暇だったので社会保険事務所に行って社会保障番号が一ヶ月以上も待っているが届かないと言った。本音は社会保険事務所の不手際に大して憤っている(社会保障番号がないとクレジットカードも運転免許も作れないため、大いに不利益を被っている)のだが、組織の末端の事務員に文句を言っても得るものは何もない(寧ろ逆ギレされて門前払いされる可能性すらある)ので、「6週間前に応募したものの、番号が届かないが、どうなっているのか」と事実だけを述べた。結果は予想通り、社会保険事務所が私の書類を処理するのを忘れていただけだったのだが、米国人は一般に自分の責任を認めないので、「今から1-2週間で番号が届くはずです」と言われただけで謝罪の言葉はなかった。まあ、この国の杜撰さにはもう慣れてきた頃だったので、想定の範囲内だったが。

他にも米国の杜撰さについて面白い話を聞いたので披露しよう。

知り合いの韓国人が携帯電話の契約をした際、身分証明書としてパスポートを提示した。彼の本名はLee Jihyungなのだが、電話会社から送られてくる請求書の名前はJihyung Seoulになっているそうだ。そうなった理由は、パスポート上で名前と出生地が隣に載っているので、携帯電話会社の事務員がSeoulを名前と勘違いしたことにある。一般の米国人の知的水準を考えると、彼らはソウルが韓国の首都であることは勿論、韓国がどこにあるかすら分からないのかもしれない。(案外、「アフリカという国がある」と思っていたりして。)
posted by Alexis at 07:23 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月23日

海外医療保険の棄却

冬休みに妻子がアメリカに来たとき、息子が中耳炎になって病院に行ったのだが、(冬季休暇3 参照http://alexisakiratoda.seesaa.net/article/409130708.html)彼らが日本に戻って2週間ぐらいしてから171ドルの医療費を請求された。診察当日に何の説明もなしに後から請求するのは詐欺だと文句を行ったが、門前払いされた。大した個人情報は提供していないし、病院としても 債権回収は困難だろうから、1ヶ月ぐらい支払わずに放置した。

ただ、支払いの督促が来ることは時間の問題だと思っていたから、その間にいろいろ手は打った。まず、ダイナースカードに連絡して海外旅行保険の適用を求めた。すると、カード名義人のみが対象で、子供は対象外であるとしてあっけなく却下。次に、いろいろ調べると妻の持っていたUCカードは家族特約があることが分かり、これなら大丈夫だろうと判断してアメリカの医療費を全て払った。領収書を受け取って、日本にいる妻に郵送して、パスポートのコピーなど必要な書類をそろえて意気揚々と保険金を請求したのだが…結果は何と家族特約は2007年10月で終わっており、支払い対象外とのこと。

残された手段は、妻が加入している組合健保に医療費の請求をすることだが、これは実際にかかった値段ではなく日本で同じ治療を行った場合の標準額が支払われるだけなので、中耳炎だと数千円にしかならないだろう。勿論のこと、今度の確定申告では医療費控除を申請して税金を取り戻すことができるが、これも数千円。結局回収できるのは医療費の半額以下に留まりそうだ。

アメリカでは出来る限り医療を受けないに越したことはないようだが、子供に関しては中耳炎や副鼻腔炎など抗生物質が必要な病気や喘息など特別な薬が必要なものにかかることが稀ではない。病院に連れていくかどうかの判断は、抗生剤や薬局で買えない薬が必要かどうか?である。たいていの病気ならば視診や聴診で診断でき、病院へ行くべきかはとりあえず判断できる。しかし中耳炎に関してはそうはいかない。診察には耳鏡が必要だからだ。というわけで、今回の教訓を生かして我が家は耳鏡を購入したのであった。

郷に入っては郷に従え。こうして出来る限りのことは自分でやるアメリカ人の精神に、一歩近づいた我が家である。
posted by Alexis at 08:44 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月28日

特異国家、アメリカ

米国は様々な意味で特異な国家である。思いつく限り具体例を挙げてみると、次の通りだ。

第一に、物理量の単位が合理的ではない。米国での長さの単位はインチ、フィート、マイルで、それぞれ2.5cm, 30cm, 1.6kmで近似できる。確かにこれらの単位は、人間の大きさから見て小さいもの、中ぐらいのもの、大きいものを表すのには適しているかもしれないが、それぞれの単位がメートル法と違って単純な比例関係(10の累乗倍のこと)にないので、暗算で変換するのが難しい。

合理的でないのは長さの単位に限らず、体積や重さもそうだ。メートル法では水1cm^3が1gに対応するから、水を通して長さの単位と体積、質量の単位が対応するから計算しやすいが、米国での体積の単位はガロンやクォート、質量の単位はポンドで、それぞれがどう対応するのかさっぱり分からない。

面積の単位に関しては合理的でないかどうか知らないが(日常生活で面積が必要になるのは不動産を契約するときだけで、機会が非常に限られているから)恐らく非合理なのだろう。

温度の単位は摂氏ではなく華氏を用いるが、摂氏は1気圧の下での水の融点と沸点をそれぞれ0度、100度と定義しているのに対して、華氏は人間の体温を100度と定義しているので曖昧で、後者は正当化しにくい。華氏x度は厳密に摂氏5/9(x-32)に等しいが、変換には引き算・掛け算・割り算が必要で暗算では面倒だ。友人から1/2(x-30)で近似できると聞いたが、そのときの誤差は|1/18(x-50)|で、華氏100度(摂氏37.8 度)ぐらいになると誤差は摂氏3度近くになる。摂氏34度も37度も暑いことには変わりないが、3度の誤差はやはり大きい気がする。

米国の特異な第二の点は、人間が提供するサービスの購入にチップが必要な点だ。経済学的には、モノであろうがサービスであろうが、また人間が提供しようがしまいが財として一括できるので、チップを支払うことは不明朗会計の最たるものとして糾弾されるべきだが、残念ながらチップが存在する。(チップ については米国だけでなく、カナダにも存在する。但しカナダの物理量の単位はSI系で統一されている。)

最近ではデビットカードやクレジットカード決済が主流になり、チップの取引履歴が残って原理的には所得把握が可能だ(政府が課税できる)が、現金決済も多く、公正な課税ができない。チップは実に悪しき習慣だと思う。サービスにとても満足して、チップをはずみたい人がいるなら本人の自由だが、チップがあって当然という風習はやめた方がいい。

ところで話は変わるが、アメリカ人は手持ちの現金が少ないことを"I am not liquid right now."と言う。日本語に直訳すると、「自分は今、流動性がない」となる。英語でも日本語でもこの表現は口語ではないが、英語でも日本語でも経済学部の人間が(冗談めかして)この表現を用いるのは面白い。
posted by Alexis at 15:48 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする