2014年11月02日

ピスタチオのアイスクリーム

私は無類のピスタチオ好きである。ピスタチオそのものを認識したのはずっと後だが、ピスタチオのアイスクリームはカナダに住んでいた幼少期からの大好物で、今でも欧州や北米などピスタチオのアイスクリームが売っているところに行くと、アイスクリームを食べる際には必ずピスタチオと何か別のものの2つを組み合わせて食べている。

日本に移住してからは、何故アイスクリーム屋にピスタチオが殆どないのかずっと疑問であった。どれぐらい稀かと言うと、私の知る限りに於いて、日本でピスタチオのアイスクリームが食べられるところは2箇所しかない。1つは新宿のある高級なジェラート屋で、もう1つは屈斜路湖畔の砂湯の売店である。 同じ緑色のアイスクリームと言えば抹茶があるが、こちらは欧米では見られない。アイスクリームを含む飲食業は典型的な内需産業だから、外国との競争に晒さ れることがなく、生産者はハイリスクの新製品を投入しない反面、消費者も嗜好が洗練されないのが原因だと思っていた。(勿論例外はある。例えば美味しい中華料理は大体何処の国に行っても食べることができる。)

少し前になるが、あるジェラート屋に行ったら、ピスタチオはなかったが、別のものを食べながら、店員に何故ピスタチオのジェラートを作らないのかと尋ねた。店員の答えを聞いたとき、長年の疑問がやっと解けた。ピスタチオは原材料が高いらしい。欧州ならトルコから、北米ならカリフォルニアから輸入できるので安いが、日本でピスタチオを買うのは高いそうなのだ。実際、砂湯の売店では普通のミルクのソフトクリームは250円で売っているが、ピスタチオのは350円であった。

ならば販売価格に転嫁すればよさそうなものなのだが、そのとき初めて日本のアイスクリーム屋ではアイスクリームの価格が種類に依らず同一であることを思い出した。欧米では、アイスクリームの種類に依って価格が異なるが、日本では大抵同一である。(例外は2〜3種類しか売っていない小規模な売店の場合。)これは経済学的に考えるとおかしい。何故なら、本来は安い原料もあるはずだから、安く作れるアイスクリームだけ作って、高い店の隣で少しだけ低く価格設定して売れば幾らでも売れることになるからだ。(これに似た冗談として、次のようなものがある。かつて某ハンバーガー屋でハンバーガーを期間限定で安く売っていたとき、ダブルバーガーはハンバーガー2個の価格より高いということがあった。そこで、ハンバーガー屋でハンバーガーを2個買い、パンの一部は 自分で食べて、残りのパンや肉でダブルバーガーを作って本来のダブルバーガーよりも僅かに低い価格で売れば、幾らでも儲けが出ると同時に幾らでもパンが食べられることになる。)

願わくば日本でも(多物一価ではなく)一物一価の原則に従ってアイスクリームが売られることを!
posted by Alexis at 14:44 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月04日

檸檬購入 其の1

Herb Cohen著の”You Can Negotiate Anything"という本を読んだ。それは、アメリカで車を買うときの参考にするためであった。
これまで、交渉に関して私の知っていたことと言えば、割引率が低い(忍耐強い)人が有利だということぐらいであった。(これは、簡単なゲーム理論のモデルで示すことができる。)




そしてその本に書いてあったことを実際に実行してみる機会を得た。2008年に渡米したての頃の話だ。
アメリカの運転免許を取ったあと、安い週末料金でレンタカーを借りてスバルのディーラーに交渉に行った。友人を誘ったら、交渉過程を 見てみたいとのことでついてきてくれたので頼もしかった。交渉原則の一つに、大人数で押しかけて強そうなふりをするというのがある。(ヤクザや警察が使うのがこれ。逆に、弱そうなふりをして相手の同情を引き出すのも手である。)ディーラーの営業時間は11時から16時だったが、11時半に行く。これも周到に考えてのことで、11時丁度に行くと購入意欲の表れだが、午後に行くと相手に昼食を食べる時間を与えてしまう(相手を空腹にしてイライラさせた方が有利)ので、11時半は最適なのだ。

まず、当然だがどんな車が欲しいか訊かれる。本音はスバルのレガシーアウトバックだが、交渉原則「情報はできるだけ与えない」に則り、「信頼性の ある四駆なら何でもいい」と答える。スバルは全部四駆だと言われた(勿論知っている)。車の購入期限は?との質問に対しては、交渉原則「時間制約は緩いほど有利」に従い、本当はクリスマス前にカナダに行くからすぐ車が必要なのだが、「学生だしもう冬休みだから時間は無制限だ」と答える。予算は?との質問に対しては、一瞬迷ったが1万ドル前後と答えた。(本当は2万ドルまでなら出してもいいと思っていた。)

ディーラーのおばさんはフォレスター、インプレッサ、レガシー、レガシーアウトバックなど在庫から探してきて、実物に案内してくれた。交渉原則 「本当に気に入ったものは交渉できないので、気に入らないふりをする」に従い、フォレスターは車高が高くてダサいだの、インプレッサはトランクが狭いだの、アウトバックは高いか古いだの批判を加える。

何はともあれ、12887ドル(先日まで13887ドルだったと主張)の2002年のレガシーアウトバック(4万8千マイル)に試乗する。頭の中 のシミュレーションでは1万5千ドル程度で2005年ぐらいのレガシーアウトバックを買うことだったが、2002年とやや古いにしては走行距離が短く、値段も手頃なこの車は、初めから気に入っていた。勿論、そんな素振りはおくびにも出さない。高速道路を走るが、加速性能も安定性も問題なし。速度計はマイルとキロの両方で表示されるのでマイルを解しない私には丁度いい。走りながら、おばさんに「新車販売はGMが前年比4割減、トヨタとホンダは3割減だけど、 お宅はどうなの?」と訊く。勿論、相手がどれだけ現金を欲しているかを探るためだ。おばさんはなかなか心得ていて「それがスバルは全然大丈夫なのよ。全天候走れる安定性の割りには燃費がいいから」と自信満々に答えたので、目的を達せなかった。予めスバルの新車販売を調べておけばよかったと後悔。というか、当時群馬の大田工場で大幅な人員削減をしたのを知っていたので、それを指摘すればよかったのだが完全に忘れていた。

オフィスに戻っても、特に満足した素振りは見せない。すると、どこかから手書きの値札を持ってきて、「これは(今日休みの)マネジャーが書いたものだけど」と言って11887ドルと書かれた値札を見せる。正直言ってこれで買ってもいいと思ったのだが、自分の交渉能力を試すことにする。「色(ワイン レッド)が気に食わない。オーディオシステムがCDでなくてカセットだ。第一2002年は古い」と文句を言う。「13887から2000下がったのだか ら、17887ドルで陳列している2007, 2008年のアウトバックはもっと下がるんじゃないか。そうしたら、比較することもできる」と問い詰める。そして、新車同様の2007, 2008年モデルを見に行く。ところがこれらに関しては譲歩が引き出せない。オフィスに戻る。

「11887ドルと17887ドルにはかなり格差がある。中間の値段で2004, 2005年のはないのか?」と訊く。これが本命だが、あくまで比較の対象にするためと称する。調べてくれたが、そのようなのが一台売れたばかりとのこと。 おばさんも商売上手だ。しかし2005年のアウトバックスポーツという車が14887ドルで出て来て、色も青でacceptableだ。オーディオも問題なし。ところがアウトバックスポーツは荷台がアウトバックよりも一回り小さく、そこがどうしても気に食わない。おばさん曰く、どうしたら満足してもらえるのか。私曰く、アウトバックは色とオーディオと年数で、アウトバックスポーツは荷台で満足しないのだから、満足するには値段を下げるしかない。

其の2へ続く

ところで米俗語でポンコツの中古車のことをレモンと言う。買った中古車がレモンでないことは祈るばかりだが、しばらく乗ってみないと分からない。
タグ:交渉 
posted by Alexis at 07:21 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月05日

檸檬購入 其の2

いよいよ交渉も終盤に差し掛かってきた。おばさん曰く、これなら買ってもいいという値段を書いて頂戴。アウトバックは9000、アウトバックス ポーツは11000と書く。対しておばさん曰く、私は下っ端だから決定権がないと。待っていました、交渉原則「全権は持つな」。それに対する私の返事は、 必殺「上司に代わって下さい。今日は上司は休みだっていうことだったけれども、携帯電話ぐらいは持っているでしょう。上司に電話して下さい。」彼女は休日 に店長に電話する権限は持っていないと言ったが、店長代理に電話して、しばらくすると店長代理がやってきた。

おばさんは店長代理に状況を説明した。もしアウトバックが9000だったら、私が先に買うわよと興奮している。私は店長代理に、「現金は欲しい か?」と訊いた。その瞬間、明らかに相手の表情が変わった。この不景気で、在庫を抱えているときに、(ローンではなく)現金が欲しくないわけはないのだ。 しばらく考えて、店長代理は11200と書いた。次に私は交渉原則「一つのことで交渉するな」を使った。つまり、値段ではまだ2200の開きがあるので、 オーディオをカセットからCDに交換できるなら、妥協の余地もあるのだがと示唆する。11200のままCDに交換できることになった。重苦しい沈黙が流れ た。私は本心では完全に満足しているが、まだ値下げさせたい。しかしそれを読まれたら終わりだ。私は「妻に相談してくる」と言って突如立ち上がって外に出 た。携帯電話を取り出し、電話をかけるふりをする。身振り手振りを交えて日本語で会話する迫真(?)の演技であった。戻ってくると、「車には妻と半額ずつ 出資する。妻は一人5000ドルが上限だと言う。二人で10000ドルだ。私が1割余分に出す。10500ドルでどうだ。」と言い放つ。対して相手は 「じゃあ真ん中を取って10850ドル」を提示。私は受け入れて交渉は終了した。

事務手続きをすると14時半で、既に日は傾いている。株なら殆ど悩まずに注文するが、車のように減価していく実物資産になると話は違うようだ。友人とマクドナルドに行ってハンバーガーを食べた。折角レンタカーがあるので、米や牛乳など重いものを買いに行った。

今回使った(使われた)交渉術をまとめよう。
・大勢で押しかけて強さを顕示する。
・相手を空腹にするなどして苛立たせる。
・情報は与えない。逆に、相手の情報を引き出す。
・時間制約は持たない。あっても教えない。
・不満を表明する。
・相手に不景気であることを認識させ譲歩を引き出す。
・代理人を通じて交渉する。全権は持たない。
・責任者を連れて来いと要求する。
・現金一括払いにする代わりに譲歩を引き出す。
・交渉の対象を価格だけに絞らない。

約定価格は自分の主張した9000ドルよりはかなり高かったが、9000ドル自体が演技で本命は1万5千ドル(但しもう少し新しいもの)だったので、結果的にはかなり満足している。あとは車がきちんと走ることを祈るのみ。
因みに交渉術は私のものではなく、全てHerb Cohen, "You Can Negotiate Anything"からの引用である。。この交渉術はuniversalだろうと思う。

タグ:交渉
posted by Alexis at 07:23 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする