2015年06月19日

不平等条約の意外な効用

1858年の日米修好通商条約は日本に関税自主権がなく、アメリカに領事裁判権があるということで、教科書的には不平等条約ということになっている。もちろんその通りで、領事裁判権がないことは正当化できないが、関税自主権の方はどうか。最近読んだミルトン・フリードマンの「選択の自由」に「日米修好通商条約は実は日本にとってよかった」という記載があり、言われてみるとその通りなので、説明しよう。

日米修好通商条約は自由貿易を謳っている。(といいつつ5%から20%の関税を認めている。)ところで、自由貿易(関税を全廃すること)は効率的である。一般に信じられているように二国間で自由貿易を行なうことは、二国間で管理貿易を行なうよりも効率的だという意味ではない。世界に何ヶ国あろうが、どんな産業を持っていようが、他国がいかなる通商政策を取ろうが、自国だけ一方的に自由貿易にするのが効率的であることが数学的に証明できる。

「しかし、コメに対する10キロ4000円の関税を撤廃したら、コメ農家が困るのではないか?」と反論されよう。もちろん、もし関税がゼロになって10キロ1500円でアメリカからコメが輸入できるようになったら、日本のコメ農家は競争に晒されて値下げせざるをえないであろう。一部は廃業を余儀なくされるかもしれない。だからコメ農家が困るのはその通り。上記の定理には仮定があって、それは「適切な直接税と給付金を組み合わせれば」である。定理の証明は信じられないぐらい簡単だ。
  1. 管理貿易のもとでの国民ひとりひとりが消費していたものを維持できるように、自由貿易のもとで直接税と給付金を行なうことを考える。
  2. 税金と給付金は互いにキャンセルするので、政府はコストゼロでその政策を施行できる(ここはちょっと数式の操作が必要)。
  3. 国民は以前消費していたものがちょうど消費できる収入を持っているので、自由貿易のもとでは少なくとも同じ消費ができ、一般には全員利益を得る。
つまりただいきなり自由貿易にするのではなくて、例えば5年間かけて毎年関税を1/5ずつ減らしていく一方で、農家にはそれまでの所得の半額ぐらいを5年間現金給付するとかすれば、みんなハッピーに自由貿易に移れるはずである。

Wikipediaを見ると「日本は…自国産業を充分に保護することもできず、また関税収入によって国庫を潤すこともできなかった。…輸入品は低関税で日本に流入するのに対し、日本品の輸出は開港場に居留する外国商人の手によっておこなわれ、外国商人は日本の法律の外にありながら日本の貿易を左右することができたのであり」と否定的に書いており「またか」と思ったが、もう少し読み進めると「裏返せば、自由貿易により外国の物品を安く購入することが可能となり、明治の近代化に寄与したとも考えられる。」と肯定的な意見も紹介しているのがせめてもの救い。
posted by Alexis at 12:41 | 経済関連の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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