2016年03月21日

バッハの誕生日

ユリウス歴1685年3月21日はヨハン・セバスティアン・バッハの誕生日である。2016年で生誕331年となった。(バッハ(Bach)はドイツ語で「小川」の意味なので、バッハが日本に生きていたとしたら小川四半とでも称したのだろうか?)

今日は遠方への出張だったため、バッハに思いを馳せながらひたすらiPodでバッハを聴いていた。普段、音楽に専念して聴くことは少ないから、改めて感動が蘇った。

バッハは和声の父、対位法の達人、オルガンの大家、完璧主義者、効率主義者など様々な顔を持っているが、今回傾聴してそれを再確認した。オルガンの演奏に関しては録音がないので断定はできないが、和声については先駆的に半音階や増4度、減5度、減7度などの不協和音を積極的に使用したことが特筆さ れる。それが顕著に感じられるのは平均律クラヴィーア曲集第I巻第12番ヘ短調BWV857のプレリュードだと思う。1小節に2回ぐらいの割合で執拗なまでに増4度、減5度、減7度を使っている。

しかしバッハをバッハたらしめているのはやはり対位法だろう。音楽の捧げものBWV1079の6声のリチェルカーレのような作品も常軌を逸していて好きだが、個人的にはバッハの最高のフーガは平均律クラヴィーア曲集第II巻第22番変ロ短調BWV891のそれだと思う。声部は4声で控え目といえば控え目だが、テーマを複雑に発展させるにはこれぐらいが妥当なのではないだろうか。BWV891では、まずアルト(A), ソプラノ(S), バス(B), テノール(T)の順でテーマを奏でる。次に、TとA、次いでSとBがストレッタでテーマを奏でる。バッハはここで終わりにせず、テーマの反行形(上下逆に 転回したもの)を導入し、T, A, S, Bの順で奏でる。先ほどと対称的に、TとS, AとBの反行く形をそれぞれストレッタで置く。ここまでなら並の作曲家でもするかもしれないが、これからがバッハの本領発揮である。Sの反行形とTの順行形をストレッタで、次いでBの順行形とAの反行形をストレッタにする。ストレッタにするだけでも作曲技法上難しいのに、それを更に順行形と反行形の組み合 わせにしているのが驚異的だ。極めつけは最後の部分で、SとAを3度平行の順行形、TとBを3度平行の反行形にしつつ、しかもそれらをストレッタにしている。4つの声部が同時に、しかし縦(3度平行のこと)にも横(ストレッタのこと)にも上下(順行と反行のこと)にもずらして演奏しているのだから、開いた口が塞がらない。

テーマは合計24回(平均律の数と一致!)出てくるが、ソプラノ・アルト・テノール・バスとも6回ずつ。順行形と反行形のテーマは12回ずつ。しかも、注意するとソプラノ・アルト・テノール・バスは全て順行形で3回、反行形で3回登場し、対称性が失われていない。

BWV891はこのような形式美を備えていながら、堅苦しい印象を全く与えない。テーマ自体も二分音符、四分音符、八分音符をこの順に1小節ずつ使った理路整然とした力強いもので、途中のつなぎの部分では半音階をうまく利用してバッハらしさが滲み出ている。

私はこの曲がひどく気に入っているので、かつて院内PHSの着メロにしていた。但し、フーガだと声部が揃う前に電話に出てしまうから、BWV891のフーガではなくプレリュードを選んだが。後者もバッハのシンフォニア形式の曲の中で最も美しいものだと思う。
posted by Alexis at 00:00 | 小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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