2015年07月25日

物価指数

物価は難しい。

経済学では、物価を説明するのに貨幣数量説という小学生でも分かる単純な理論がある(簡単に説明すると、カネは単なる紙切れで、流通するカネが2倍になれば価格も2倍になるというもの)が、これが成り立つのは第1次大戦後のドイツや、第2次大戦後のハンガリーなど、中央銀行が国債を引き受ける場合に限る気がする。

一般に利上げすると物価が下がる(或いは物価上昇が抑えられる)と信じられているが、理論的には明らかではない。実際、利上げをすると住宅を購入する個人や設備投資をする企業など債務者は資金調達コストが上昇してこれらの行動を減らし、需要を減少させるけれども、債権者は生涯所得が増して需要を増加させるから、債務者と債権者が半々であることを考えると総需要がどちらに動くかは明らかではない。従って、物価の変化も明らかではない。

現在の中央銀行の役割は主に物価の制御だが、日銀は過去、明確な物価上昇が認められないのに利上げした。その根拠は、低金利を放置すると将来物価が上昇する蓋然性が高いからというものであった。直近の消費者物価指数の伸び率はほぼゼロだが、個別の財で見ると食品やエネルギー関連は値上がりし、一方で電化製品などが値下がりしている。そこで、そもそも物価指数が適切かどうか(景気が過熱しているかどうかを反映しているのか)を考えてみよう。

パソコン・ソフトウェア・高機能電化製品などは技術革新が著しいので、単位機能当たりの価格は下行トレンドである。食品・エネルギー関連など日本が多くを輸入に依存する財の価格は、海外の需要動向に大きく左右される(例えば中国人がマグロを食べるようになってマグロが高くなった)のみならず、為替レートにも依存する。水などの生活必需品は価格に依らずほぼ一定量を消費するから、価格が変動したからといって需給ギャップが正か負かの目安にはならない。纏めると、物価指数に組み込む適切な財の条件は、
・技術革新の著しい成長産業でないこと。つまり、成熟産業であること。
・海外需要や交易条件に左右されないこと。つまり、内需産業であること。
・生活必需品でないこと。つまり、奢侈品であること。
であると思われる。

以上3つの条件を満たす財として、私は次のものを提唱したい。
1. 床屋。床屋は何千年も前からあって、鋏で髪を切るだけだから技術革新は殆どない。わざわざ海外では散髪しないから、内需である。ある意味生活必需品だが、おしゃれな美容室はいくらでもあるので奢侈品でもある。
2. スポーツ観戦。ローマ時代から戦車競争や剣闘士の試合があった。選手の技術は人生を通じて向上することはあっても、産業全体で見れば昔と今とであまり違いはない。
3. 風俗業。ローマ時代から娼婦はおり、技術はアルス・アマトリアとして古代からある。
4. 不動産業。土地は高層ビルを建てたり海を埋め立てたりでもしない限り増えないが、これらによる増分は高が知れている。土地は移動できないから輸入できない。土地がないと住めないという点で生活必需品だが、豪邸にしようと思えばいくらでもできる。
5. 温泉。

他の例は読者が提案するのを期待しよう。これらの財を組み合わせて物価指数を作ったら面白いかもしれない。
posted by Alexis at 00:00 | 経済関連の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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